鉄板の音の向こう側へ:世界展開を実現した5つの秘訣
東京の一軒から始まったコンセプトが、17か国570店舗以上へ。成長を本当に支えた5つの決断をご紹介します。
Pepper Lunchは1994年、東京の一軒の店からスタートしました。その原点は、どこまでもシンプルな発想でした。上質なビーフと、お客様ご自身で焼き上げられるほど熱々のプレートをお届けすること。それから30年、この発想は17か国570店舗以上へと広がりました。ここまで遠くへ旅するコンセプトは稀であり、味だけでたどり着けるものでもありません。たどり着けたのは、早い段階で下し、揺るがずに守り抜いたいくつかの決断があったからです。そのうちの5つをご紹介します。
1. 仕組みそのものに働いてもらう
約260℃に熱した鋳鉄プレートは、単なる演出ではありません。それ自体が事業の仕組みです。仕上げの調理をお客様が担ってくださるため、Pepper Lunchの厨房では、同規模のフルサービス店舗に比べて熟練の調理スタッフが少なくて済みます。この点こそが、このフォーマットを世界へ持ち運べる理由です。新しい国に進出するたびにシェフの一団を採用・育成する必要はありません。必要なのは、食材を準備し、プレートの温度を管理すること。17の市場で標準化するには、はるかに現実的な条件です
2. ぶれてはいけないものは中央で守る
規模を拡大しても一貫性を保つとは、すべてを同じにすることではありません。絶対にぶれてはならない2つか3つの要素を見極めて中央で管理し、それ以外には柔軟性を持たせることです。Pepper Lunchにとって、譲れないのはソースとプレートです。看板のペッパーソースとガーリックバターソースは一括で製造し、プレートはどこでも同じ基準で調整されています。この2つさえ守れば、ジャカルタのBeef Pepper Riceは東京と同じ味になるのです。
訪れたPepper Lunchはどの店舗も、数年前に東京で最初に味わった一皿と同じ味でした。このシステムレベルの徹底こそが、ブランドと単なる店舗の集合体を分けるものです。
3. 契約を更新してくれるオペレーターとともに伸びる
フランチャイズで最も正直な指標は店舗数ではなく、契約更新率です。良い提案があれば、どんなブランドでも初めてのフランチャイジーと契約を結べます。しかし10年の契約期間を終えたあとに再契約していただけるのは、実際に店舗の収益性が成り立っているブランドだけです。Pepper Lunchの更新率は約90%。日本、韓国、シンガポール、タイ、インドネシア、オーストラリア、アメリカのいずれでも同様です。拡大とは複利そのもので、長く続けてくださるオペレーターが2店舗目、3店舗目を開店するほうが、新規に募集するよりも低コストで迅速なのです。
- 継続は複利を生みます。契約を更新されるフランチャイジーの多くが店舗を増やし、一つの関係が店舗群へと育ちます。
- 更新こそが証明です。90%の再契約率は、店舗単位で収益が上がっていることの何よりの証拠です。
- 評判が人を呼びます。オペレーター同士はつながっています。フランチャイジーが離れないブランドは、次の候補者に自ら語りかけてくれるのです。

4. 物件に合わせて形を選ぶ
一種類の箱でしか成立しないコンセプトは、拡大できません。Pepper Lunchはインライン型、エンドキャップ型、モールのフードコート型と複数のフォーマットを展開しています。つまり、一つの型を合わない場所に無理やり押し込むのではなく、その商圏で最良の物件を狙えるということです。シンガポールのフードコート型プロトタイプは、北米のモール出店の雛形となりました。フォーマットの柔軟性は、出店できる場所の広さであり、出店できる場所の広さが、どこまで成長できるかを決めます。
5. 加速するときこそ基準を守る
成長中のブランドが陥る失敗は、出店目標のために基準を緩めてしまうことです。本当に必要なのはその逆で、成長への圧力が高まるときこそ、オペレーターの選定をより慎重にし、譲れない基準をより厳格に守ることです。Pepper Lunchは30年かけて築いた信頼を守るために、容易に得られる店舗数を手放してきました。最近のテキサスでの契約も、最初に名乗りを上げた相手ではなく、複数店舗の運営実績を持つオペレーターに託しています。これは慎重さが成長を鈍らせているのではありません。成長が長続きしている理由そのものです。


